【簡単】エントロピーとは|エントロピーの事例14選

エントロピーとは|エントロピーの事例14選 物理

「エントロピーって何? エントロピー増大則とは? エントロピーを事例で知りたい。 物理学って何だか難しそうだな…」

こういった疑問に物理学修士の筆者が答えます。

結論

エントロピーとは乱雑さを表す指標と言われており、唯一「不可逆性」を表現できる物理関数でもあります。詳細は本記事にて解説します。

本記事の参考文献

本記事の内容

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エントロピーとは

エントロピーとは

エントロピーの概念は知ってもあまり意味がないので、読み飛ばしOKです。エントロピーとは乱雑さを表す指標で1865年にドイツの物理学者ルドルフ・クラウジウス(1822-1888年) が、「変化」の意味をもつギリシャ語「トロピー」に、「中へ」という意味を表す接続後「エン」をつけて、新しく「エントロピー」という用語を作りました。

エントロピーは唯一「不可逆性」を表現できる物理関数でもあります。例えばニュートン方程式やアインシュタイン方程式などは時間が逆に進んでも問題ありません。しかし、エントロピーは時間が逆に進むことを禁止しているのです。
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エントロピーの性質

エントロピーの性質

エントロピーの性質がわかれば、なぜ冷めた水は再びお湯に戻らないのかや、なぜ止まったボールが再び転がり始めないのかがわかります。エントロピーの性質を理解するには、「エネルギーの質」と「エントロピー増大則」を知る必要があるので、それぞれ解説します。

エネルギーの質

エントロピーの性質を理解する上で、エネルギーの質は必須となります。エネルギーには質があり、質の高さは色々な仕事ができるかどうかで決まります。例えば、運動エネルギー、ポテンシャルエネルギー、電気エネルギーはいろいろな仕事ができるので、質の高いエネルギーです。太陽光エネルギーや化学エネルギーは少しエネルギーの質が低くなり、熱エネルギー(常温)は1番質の低いエネルギー(何の仕事もできない)です。ただし、熱エネルギーは高温になればなるほどできる仕事が増えるので、エネルギーの質が向上します。例えば、100℃のお湯1ℓと25℃の水5ℓでは、25℃の水の方が熱量は大きいです。しかし、質の低いエネルギーである25℃水ではカップラーメンは作れません。このようにエントロピーが導入されてから、エネルギーの質という概念ができました。

エントロピー増大則

エントロピー増大則とは「自然に起こる変化は、全体のエントロピーが増える方向に進む」という法則です。そして、エントロピーが増える条件には「1.質の高いエネルギーが質の低いエネルギーに変わる」、「2.物質の存在空間が拡がる」の2通りがあります。

1.質の高いエネルギーが質の低いエネルギーに変わる

例えば、コップに入った100℃のお湯を25℃の部屋に置いてたら25℃の水になったとします。この場合、質の高いエネルギー(100℃のお湯)が質の低いエネルギー(25℃の水)になったので、エントロピーは増えました。逆に質の低いエネルギー(25℃の水)が質の高いエネルギー(100℃のお湯)になるのは、エネルギー保存則には反しませんがエントロピー増大則に反するので、自然には起こらないのです。ちなみにエネルギー保存則とは「熱力学第一法則」とも呼ばれ、エネルギーは形は変えるが無くならないことです。例えば、太陽の光エネルギーで水が蒸発して雨が降り、水がポテンシャルエネルギーとなって水力発電で電気エネルギーを作り、人間の利用したい熱エネルギー(IH、暖房)や運動エネルギー(電気自動車の走行)に変換して、最後は廃熱という熱エネルギーになります。最初の光エネルギーは、最終的に熱エネルギーへと変わりましたが、エネルギーの総量は同じなのです。

2.物質の存在空間が拡がる

芳香剤を部屋に放置してしばらくすると、部屋中に芳香剤の匂いがします。これは芳香剤粒子の存在空間が拡がったのでエントロピーが増えていることを表しています。逆に部屋中に拡がった芳香剤のの匂いが1箇所に戻ることはエントロピーが減る方向なので起こりません。

エントロピーの事例14選

エントロピーの事例14選

エントロピー増大則を理解した上で、エントロピーが実際にどのような場面で使われているのか、14の事例で解説します。

80℃のお湯を冷ます

状況

80℃のお湯をコップに入れ、その時の周りの温度15℃とします。そのまま放置しておくと、コップの中のお湯はどんどん冷えて、周りの温度と同じ15℃になって、それ以上変化しなくなります。

エントロピー

80℃のお湯(質の高いエネルギー)が15℃の水(質の低いエネルギー)に変わったので、エントロピーは増えています。逆にこの環境では、15℃の水(質の低いエネルギー)が80℃のお湯(質の高いエネルギー)なることはエントロピー増大則に反するのでありえません。

エントロピーの変化量

80℃の熱エネルギー→15℃の熱エネルギー(+10J/K)

J/Kとはエントロピーの単位で、熱量を温度で割ったものという意味です。

15℃の水を温める

状況

15℃の水をコップに入れ、その時の周りの温度 80℃とします。そのまま放置しておくと、コッ プの中の水はどんどん温まり、周りの温度と同じ80℃になって、それ以上変化しなくなります。

エントロピー

ここでは15℃のお湯(質の低いエネルギー)が80℃の水( 質の高いエネルギー)に変わったので、エントロピーは減っているように思えますが、逆に80℃の周り(質の高いエネルギー)は少し冷め(質の低いエネルギーになり)、全体のエントロピーとしては増えているので、エントロピー増大則には反しません。

ドライヤー

状況

ドライヤーで暖かい風を出して、周囲を温める。

エントロピー

常温の熱エネルギー(質の低いエネルギー)が高温の熱エネルギー(質がそこそこ高いエネルギー)に変わったので、エントロピーは減っているように思いますが、電気エネルギー(質の高いエネルギー)が高温の熱エネルギー(質がそこそこ高いエネルギー)に変わっているだけなので、エントロピーは増えているのです。

エントロピーの変化量

電気エネルギー→熱エネルギー(+2500J/K)

電子レンジ

状況

15℃の水をコップに入れて、レンジで加熱すると、コップの中の水はどんどん温まり、80℃のお湯になった。

エントロピー

15℃のお湯(質の低いエネルギー)が80℃の水( 質の高いエネルギー)に変わったので、エントロピーは減っているように思えますが、電気エネルギー(質の高いエネルギー)が熱エネルギー(質の低いエネルギー)に変わったので、全体のエントロピーとしては増えています。よってエントロピー増大則には反しません。

転がるボール

状況

床に転がしたボールが自然に止まった。止まる際に、ボールの運動エネルギーが床の熱エネルギー(摩擦熱)に変わった。

エントロピー

ここでは運動エネルギー(質の高いエネルギー)が床の熱(質の低いエネルギー)に変わったので、エントロピーは増えています。エネルギー保存則では床の摩擦熱でボールが再び転がっても問題ないのですが、エントロピー保存則がそれを禁止しているのです。

振り子

状況

高い位置から振り子を離すと、半永久的に往復する。

エントロピー

位置エネルギーが運動エネルギー代わり再び位置エネルギーに戻るという流れを繰り返します。
運動エネルギー(質の高いエネルギー)が位置エネルギー(質の高いエネルギー)に変わって、エントロピーのやりとりが無いに思われますが、実は微妙に摩擦熱( 質の低いエネルギー)や空気抵抗の熱( 質の低いエネルギー)が発生して、エントロピーは増えています。そしていずれ振り子は止まります。

風力発電所

状況

風力(風の運動エネルギー)を使い、プロペラを回転させ、その回転を利用して電気を作る。

エントロピー

風の運動エネルギー(質の高いエネルギー)がプロペラの運動エネルギーに変わり、電気エネルギー(質の高いエネルギー)になります。
電気エネルギーは家庭で使われると廃熱として熱エネルギー(質の低いエネルギー)になります。しかし、風の運動エネルギーも風力発電で使われなかったら地面と摩擦し熱エネルギー(質の低いエネルギー)になるため、風が風力発電で使われようが使われまいが、エントロピーの増加量は変わらないのです。


火力発電所

状況

火力発電所で、エネルギー源として石油(化学エネルギー)を使い、石油をボイラで燃やす。そこで発生した水蒸気を蒸気タービンと発電機を使って電気エネルギーを取り出し、廃熱を外に大量に捨てる。

エントロピー

石油である科学エネルギー(質の高いエネルギー)が、600℃熱エネルギー(中程度の質のエネルギー)になり、最後に電気エネルギー(質の高いエネルギー)に変わっているので、エントロピー保存則に反しているように思えますが、実は廃熱(質の低いエネルギー)を大量に出しているので、全体のエントロピーとしては増加しているのです。ちなみに火力発電では、電気エネルギーとして取り出せる科学エネルギーは60%ほどで、残りの40%は廃熱として捨てられます。

水に1滴のインク

状況

お椀に水が入っており、その中に1滴のインクを垂らすと、インクがお椀の水の中を拡がって、全体として薄い色になる。

エントロピー

インクがお椀の水の中を拡がる(物質の存在空間が拡がる)ので、エントロピーは増えます。

脱臭剤

状況

部屋に脱臭剤を置いてしばらく放置すると、匂い粒子が脱臭剤の個体にくっついて、匂わなくなる。

エントロピー

臭いが個体にくっつく(物質の存在空間が小さくなる)ので、エントロピーは減少しているように見えますが、実は発熱反応が起こっており、化学エネルギー(質の高いエネルギー)→熱エネルギー(質の低いエネルギー)に変わっているので、全体としてエントロピーは増えているのです。

瞬間冷却剤

状況

瞬間冷却剤の袋の叩いて薬剤が混ざると、吸熱反応(化学反応)を起こし、急激に冷える。

エントロピー

常温の熱エネルギー(質の低いエネルギー)が冷却反応である科学エネルギー(質の高いエネルギー)に変わったので、エントロピーは減っているように思えます。しかし、冷却材の中に入っている硝酸アンモニウムが水に混ざって、硝酸イオンとアンモニウムイオンに分かれ、それぞれの存在空間が拡がっているので、全体のエントロピーは増えているのです。よってエントロピー増大則には反しません。

エントロピーの変化量

熱エネルギー→化学エネルギー(-94J/K)
物質の存在空間の拡大(+108J/K)
全体のエントロピー(+14J/K)

使い捨てカイロ

状況

使い捨てカイロを袋から取り出すと、カイロの中の鉄粉が酸化して発熱する。

エントロピー

鉄粉と酸素(化学エネルギー)が化学反応を起こし、熱エネルギー(質の低いエネルギー)ので当然の結果となりました。しかし、自由に飛び回っていた酸素分子は鉄粉と反応して固定されるため、物質の存在空間は小さくなる(エントロピーは小さくなる)のです。しかし、全体としてはやはりエントロピーは増えるので、エントロピー増大則には反しません。

エントロピーの変化量

化学エネルギー→熱エネルギー(+1380J/K)
物質の存在空間の縮小(-140J/K)
全体のエントロピー(+1240J/K)

塩が水に溶ける

状況

容器に入った水に塩(塩化ナトリウム)を加え、塩が溶けて、水中でナトリウムイオンと塩化物イオンにわかれます。

エントロピー

塩化ナトリウムがナトリウムイオンと塩化物イオンになると吸熱反応を起こすので、エントロピーは減りますが物質の存在空間は拡がるため、全体のエントロピーは増えるのです。

ちなみにナメクジに塩をかけると縮むのは、水しか通さないナメクジの皮膚に塩をかけることによって、塩が皮膚の中の水と混ざろうとする(物質の存在空間が拡がる)ので、水が皮膚から出てくるのが原因です。

エントロピーの変化量

化学エネルギー→熱エネルギー(-4J/K)
物質の存在空間の縮小(+12J/K)
全体のエントロピー(+8J/K)

歯は水に溶ける?

状況

容器に入った水に歯(リン酸カルシウム)を入れても溶けない。

エントロピー

リン酸カルシウムが水に溶けてリン酸イオンとカルシウムにならないのは、吸熱反応によるエントロピーは増加より、物質の存在空間が拡がることによるエントロピーの減少の方が大きく、全体のエントロピーは減ってしまい、エントロピー増大則に反するからです。

エントロピーの変化量

化学エネルギー→熱エネルギー(+0.7J/K)
物質の存在空間の縮小(-3J/K)
全体のエントロピー(-2.3J/K)

エントロピーの弱点

エントロピーの弱点は「変化の早さ」を把握できないことです例えば、木や紙が二酸化炭素と水になるのは全体のエントロピーは増える方向なので、木や紙を大気中においておくと、二酸化炭素や水になるのです。しかし、いつ変化するのかはエントロピーから判断できません。
物質の変化が起こらない場合はエントロピーが低くてこれ以上変化しない場合と、 エントロピー的には起こってもいいのですが、速度が遅くて起こらないという2つの場合があります。

エントロピーが増える理由

エントロピーが増える理由は、世の中の離散的なもの全てはボルツマン分布から外れたら戻ろうとするからです。上の表はボルツマン分布を表していて、横軸に原子の速さ、縦軸にその原子がどのくらい存在しているのか割合を表しています。もし仮に、原子の速さを意図的に早くしたら、しばらくするとボルツマン分布に戻ります。これは原子の速さだけではなく、例えば年収、背の高さなど離散的なもの(連続的なものではなく1,2,3などの飛び飛びの数字をとるもの)は全てに当てはまります。これがエントロピーが増える理由なのです。

宇宙のエントロピー

エントロピーは乱雑さでもありますし、自由さでもあります。つまり、物質が自由になるほどエントロピーも増えていきます。例えば宇宙誕生直後はものすごく小さく、宇宙に飛び交う物質には自由はありませんでした。しかし、宇宙は加速度的に膨張していき、大きくなるたびに物質は自由になっていきました。つまり宇宙が始まって以来、エントロピーは増え続けているのです。ではこのまま宇宙の物質が自由になり続けてエントロピーが増え続けたらどうなるかというと、虚無の宇宙になります。宇宙の物質の数は有限なので、空間だけが無限に広がっていったら物質が離れ離れになっていき、近くにはほどんどなにものない虚しい空間が残るのです。

時間とエントロピー

先ほどエントロピーは自由さを表す指標で、物質が自由になるとエントロピーが増えることをいいました。実は人間の脳内も物質がどんどん自由になっていってエントロピーが増えています。人間が時間を過去から未来へしか認識できないのエントロピーが増えるからなのです。もう少し丁寧にいうと、人間の記憶の蓄積は、脳内の物質がどんどん自由になっていることを意味しています。つまり記憶の蓄積する方向はエントロピーが増える方向なのです。もし人間が未来から過去を認識できるとすると、それはエントロピーが減少していることを意味して、エントロピー増大則に矛盾してしまいます。これが「人間が過去から未来へ時間が流れているように感じる原因」なのです。

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